● 泊原発を止めても電力が不足しない理由
チーム「今だから」調べ 2012. 4.28 改訂版

福島原発6号機と東海原発2号炉の建設・総監督をした元GEエンジニアの菊地洋一氏は、「日本にあるすべての原発には必ずバックアップ発電設備があり、いつ何時すべての原発が止まっても停電しない仕組みが出来上がっている。今回の震災による停電騒ぎは、原発が壊れたからではなく、火力・水力発電所が沢山壊れてしまったことによる」と述べています。

・その証拠に、北電のピーク時供給力(自家発電買電分を含む)は今冬(2011年度)、650万kW前後で推移しており、それに対し最大使用電力は500万kW前後、多い日でも561.8万kW(過去最大は578.8万kW)であり、供給余力(余っている予備の電力)は概ね91万kW以上と、泊原発3号機(定格出力91.2万kW)と同等の値を維持しています。 また、冬期は関東圏の電力余力が大きいため、海底ケーブルの上限60万kWまでは東電などから融通してもらえます。従って泊原発3号機を今すぐ止めても(或いは泊1・2号機を再稼働させなくても)電力不足にはなりません。(融通は一時的なものであり、後述の新発電所が完成すればその必要はなくなります。)
http://denkiyoho.hepco.co.jp/download.html
http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/20111006_481963.html

・その供給余力は、稼働中の最大発電所(現在は泊原発3号機)に何かトラブルが発生して停止しても電力不足にならないようにとの理由で、その発電所の定格出力を目途に設定されていますが(現在は泊3号機の91.2万kW)、その「最大発電所が実際にトラブル等で停止して供給余力がギリギリ・もしくはマイナスになった」ことは、北電広報部によると「戦後では今まで一度も無い (戦前のデータは無い)」とのことなので、少しの間(後述の新発電所が完成するまで)それを想定して原発1機分もの供給余力を確保する必要性は極めて少ないと言えるでしょう。

・北電は、今夏に苫東厚真火力発電所4号機(出力70万kW)が定期検査で停止する(※1)ことから、泊原発1・2号機を再稼働させないと今夏の電力が「猛暑なら17万kW足りない」「平年並みなら余力ゼロ(=マイナスにはならない )」と言っています(2012.4.23)が、
http://www.hepco.co.jp/info/2012/__icsFiles/afieldfile/2012/04/23/120423a_3.pdf
公開されている2009年以降の夏期で最大電力が485万kW(北電計算で電力が足りなくならない値)を超えた日数は、2009年はゼロ、2011年は1日。猛暑が続いた2010年でも9日 です。※2
 この数日の数時間(電力が不足する可能性があるのは気温が高い日中)のみをピークシフトやピークカットで乗り切れば、夏期の電力も北電だけで賄える計算になります。 http://denkiyoho.hepco.co.jp/download.html
ピークシフト・ピークカットの図 ※ピークシフトは、電気の使用時間を分散させるもので、1日の使用電力量自体は減らす必要はありません。


・道内には現在236万kW 分もの自家発電設備があります。これらは現在フル稼働しているわけではないので、北電がここからの買電をもっと増やす余地はあるはずですし(北電自身が検討していると公言しています)、また、政府が発送電分離の法整備をして発電設備を持つ企業が直接家庭や企業に売電できるようすれば、既存設備からの売電増加はもちろん、新たな発電設備も造られる可能性が高いです。そうなると北電が確保しなければならない最大電力は減り、電力が不足する事態はさらに避けられるでしょう。
http://www.hkd.meti.go.jp/hokpk/h22electric/index.htm
政府は発送電分離のための電気事業法改正案を2013年1月に提出することを目指していますが、脱原発のみならず、電気料金値下げ・雇用の増加による経済活性化のためにも、これをもっと前倒しすべきでしょう。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/syasetsu/20120110_2.html

・東京電力はこの1年で緊急設置電源を国内外からレンタルするなどして、総計170万kW もの新電源を作りました。
http://www.tepco.co.jp/torikumi/thermal/popup_03-j.html
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11042208-j.html
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/110811s.pdf
北越紀州製紙・三菱商事が4万kWクラスのガスタービン発電設備を80億円で新設する計画を発表していますので、http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2012/html/0000013780.html
仮にレンタル料がその1/10だとすると、不足分を補える20万kW分をレンタルすると、40億円かかる計算になります。
北電の純資産は少なくとも3800億円ほどあり、このうち北電自身が「2500億円くらいは即現金化できる」と答えている(道議会での議員の証言)そうなので、東電同様に設備をレンタルして17万kW程度の余力を作るのは決して難しくはないと言えるでしょう(これも北電自身が検討していると公言しています)。

・北電は本当に足りなくなった場合は「東電から融通してもらうことを検討する」とも言っています。※3
 東電は北電の約10倍もの発電設備を持っており、それだけ供給余力も大きいため、東電の原発全てが停止したままでも北電に数万〜17万kW程度融通するのは夏期でも不可能ではないと推測できます。

・北電は、2014.10-2015.12に京極水力で40万kW(最終的に60万kW)、2018年に北ガスと協力しガスコンバインドで50万kW(最終的に160万kW)の新発電所 の運転開始を予定しています。また、2014-2015以降に風力発電から20万kW分の買電を予定しています。
http://www.hepco.co.jp/info/2010/1187532_1424.html
http://www.hepco.co.jp/ato_env_ene/energy/water_power/kyogoku_ps/index.html
http://www.hepco.co.jp/info/2011/1187960_1445.html
http://otaru-journal.com/2011/10/1012-2.php
http://www.asahi.com/eco/news/HOK201110030012.html
京極水力発電所は純揚水式発電なので、従来型の水力発電に比べ安定した電力供給が見込めます。つまり、それまでの3〜4年さえ乗り切れば、北電が足りないと言う「17万kW」は北電自身の発電所で賄えるようになります。

・石狩湾に建設される大規模ガスコンバインド発電所は、比較的建設が容易でもっと早く作れるという有識者もいます。定格出力が160万kWもの新発電所が完成すれば泊原発の必要性は微塵もなくなるので、これも可能であれば予定を前倒しして建設すべきです。

・冬期については、夏期に定期検査で停止していた苫東厚真等の火力発電所が稼働するため、電力不足になる可能性は低いですが、万が一、新発電所が完成するまでの数年間に火力発電所の一部が何らかのトラブルで停止しても、冬期は東電の電力に100〜200万kW程度(柏崎刈羽原発の再稼働なしで)の余力があり、海底ケーブルの最大容量60万kWまでは融通してもらえるので、新発電所が出来るまでの数年間に電力不足になる可能性は極めて低いと言えます。※4
http://www.tepco.co.jp/forecast/html/calendar-j.html

※1:火力発電所の定期検査は概ね2年に1度。2013年・2015年には苫東厚真2号機(出力60万kW)が定期検査時期になります。
※2:2008年以前の数値は今後公開するか検討するとのこと(北電広報部より)。
※3:過去5年間に本州から北電に4度融通した例があります。なお、東電から北電へ電力融通を行う場合は、東電がまず東北電に融通し、その分を東北電が北電に融通する形になるとのこと(東北電・東電広報部より)。
※4:海底ケーブルは新たに増設計画があるが、着工から完成まで10年ほどかかるとのこと(北電広報部より)。


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